知らないと損! iDeCoの受け取り方で税金が数十万円変わる理由

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iDeCo(個人型確定拠出年金)の制度が大きく変わりました。特に、2024年の税制改正により、iDeCoを一時金として受け取る際の「退職所得控除」の適用条件が厳しくなりました。これにより、今まで一時金受取を前提にしていた方にとっては、想定以上の税負担が発生する可能性があります。

しかし、iDeCoの受け取り方法は一時金だけではありません。もう一つの選択肢として、「年金受取」を活用することで、税負担を抑えることができる場合があります。今回の記事では、なぜ年金受取を検討すべきなのか、一時金受取との比較、そして最適な受取方法の選び方について解説します。

  1. iDeCoの税制改正で何が変わったのか?
    1. 退職所得控除の「5年ルール」から「10年ルール」へ変更
    2. 一時金受取の税負担が増加するケースとは?
    3. 一時金受取は慎重に検討が必要
  2. iDeCoの受け取り方法は一時金と年金、どちらが有利?
    1. 一時金受取のメリット・デメリット
    2. 年金受取のメリット・デメリット
    3. 退職金との関係で変わる税負担
    4. 受取方法は慎重に選ぼう
  3. 年金受取を検討すべき3つの理由
    1. ① 「公的年金等控除」を活用できる
    2. ② 一時的な高額所得を避け、税負担を平準化できる
    3. ③ 将来のライフプランに柔軟に対応できる
    4. 年金受取のメリットを活かそう
  4. どちらを選ぶべき?ケース別の最適な選択肢
    1. ① 退職金がある場合のおすすめの受取方法
    2. ② 他の年金とのバランスを考えた戦略
    3. ③ 「ハイブリッド受取」も選択肢に
      1. ハイブリッド受取のメリット✅ 退職所得控除の範囲内で一時金を受け取り、税負担を抑える✅ 残りは年金受取にして、公的年金等控除を活用する✅ まとまった資金を確保しつつ、老後の生活費を分散して受け取れる
    4. 自分に合った受け取り方法を選ぼう
  5. まとめ:iDeCoの賢い受け取り方を考えよう
    1. 受け取り方法によって手取りが大きく変わる
    2. 制度変更を踏まえた賢い選択を
    3. 最後に:受け取る前にしっかりシミュレーションを!

iDeCoの税制改正で何が変わったのか?

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後の資産形成をサポートするための制度であり、掛金の所得控除や運用益の非課税など、税制優遇が魅力の一つです。これまで、iDeCoの受け取り方法としては「一時金受取」が多く選ばれていました。その理由の一つは、退職所得控除を活用することで、税負担を軽減できたためです。

しかし、2024年の税制改正により、退職所得控除の適用条件が厳しくなり、一時金として受け取る場合の税負担が増加する可能性が高まりました。では、具体的にどのように変わったのかを見ていきましょう。

退職所得控除の「5年ルール」から「10年ルール」へ変更

これまでの制度では、退職所得控除は「直近の退職所得」とまとめて計算されるため、iDeCoを一時金で受け取る際に退職金と同じ年度に受け取ると、控除の範囲内で非課税になりやすい仕組みでした。特に、「5年ルール」と呼ばれるルールによって、退職後5年以上経過してから受け取る場合は、新たに退職所得控除を使えるメリットがありました。

しかし、今回の改正でこのルールが「10年ルール」に変更されました。つまり、退職金を受け取った後、10年以上経過しないと、新たに退職所得控除を適用できないことになります。

この変更によって、例えば60歳で退職し、61歳でiDeCoを一時金として受け取った場合、**退職金と合算されて計算されるため、課税対象となる可能性が高くなります。**従来のルールであれば、65歳まで待てば退職所得控除を適用できましたが、新ルールでは70歳まで待たなければなりません。

一時金受取の税負担が増加するケースとは?

この制度変更により、次のようなケースでは一時金受取の税負担が大きくなる可能性があります。

会社の退職金とiDeCoを同じ年に一時金として受け取る場合
退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取ると、控除枠を超えた部分が課税対象になりやすくなります。

退職後10年以内にiDeCoを一時金として受け取る場合
退職所得控除を最大限活用するためには、10年以上待つ必要があります。しかし、その間に資金が必要になると、不利なタイミングで受け取らざるを得ない可能性があります。

退職金が多く、もともと課税対象になる予定だった場合
退職金の金額が大きく、もともと退職所得控除の範囲を超えてしまう場合、iDeCoを一時金で受け取ることでさらに税負担が増してしまいます。

一時金受取は慎重に検討が必要

今回の税制改正によって、一時金として受け取る際の税負担が増加するケースが出てきました。これまで「退職所得控除を活用すれば非課税になる」と考えていた人も、受取のタイミングによっては予想外の税負担を強いられる可能性があります。

このため、iDeCoの受け取り方法として「年金受取」も視野に入れることが重要です。次は、一時金と年金のどちらが有利なのか、それぞれのメリット・デメリットを詳しく見ていきます。

iDeCoの受け取り方法は一時金と年金、どちらが有利?

iDeCoの受け取り方法には、大きく分けて「一時金受取」と「年金受取」の2種類があります。今回の税制改正により、一時金受取の税負担が増える可能性があるため、年金受取を検討する必要性が高まっています。 しかし、どちらの方法が自分にとって有利なのかは、状況によって異なります。ここでは、一時金受取と年金受取、それぞれのメリット・デメリットを整理していきましょう。

一時金受取のメリット・デメリット

一時金のメリット

まとまった資金を一度に受け取れる
一時金として受け取ることで、大きな支出(住宅ローンの繰り上げ返済、リフォーム、子どもの教育資金など)に充てることが可能です。

退職所得控除を活用できる(ただし要注意)
退職金と一緒に受け取ることで退職所得控除を適用できます。ただし、前章で解説したように、「10年ルール」により控除の適用が難しくなったため、従来よりも慎重な計画が必要です。

運用益がすべて非課税で受け取れる
iDeCoの運用益は通常の投資信託のように課税されず、そのまま非課税で受け取れます。

一時金のデメリット

一時的に大きな課税対象となる可能性がある
特に、退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取ると、控除枠を超えてしまい、高額の税負担が発生する可能性があります。

長期的な資金管理が必要
一度に受け取った資金を計画的に使わなければ、老後資金が不足するリスクがあります。

年金受取のメリット・デメリット

年金受取のメリット

「公的年金等控除」が適用される
年金形式で受け取ると、「公的年金等控除」の対象となります。控除額は年齢や受取額によって異なりますが、一時金受取に比べて税負担を軽減できる場合が多いです。

所得が平準化される
年金受取では、数年間に分けて少しずつ受け取るため、一時金のように高額所得扱いになることを防ぎ、税負担を抑えやすくなります。

老後の資金計画が立てやすい
年金形式なら、毎年決まった額を受け取れるため、計画的に生活費を管理しやすくなります。

年金受取のデメリット

受取期間中に制度変更のリスクがある
長期間にわたって受け取るため、将来的に税制やiDeCoの制度が変更される可能性があります。

運用益が課税される場合がある
一時金と異なり、年金受取の場合は一部の運用益が課税対象になるため、全額が非課税とはならない点に注意が必要です。

年金受取に対応していない金融機関もある
すべての金融機関が年金受取に対応しているわけではないため、事前に確認が必要です。

退職金との関係で変わる税負担

iDeCoを受け取る際に重要なのが、「退職金の受取方法と組み合わせることで税負担がどう変わるのか?」という視点です。

  • 退職金が少ない場合 → 退職所得控除の範囲内で一時金受取を選択するのも有効。
  • 退職金が多い場合 → 退職所得控除の枠を超える可能性が高いため、年金受取の方が税制上有利になりやすい。
  • 退職後10年以内にiDeCoを受け取る場合 → 退職所得控除が適用できないため、年金受取を選択した方が税負担が軽減できる可能性がある。

受取方法は慎重に選ぼう

iDeCoの受け取り方法は、一時金と年金の2種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。特に今回の税制改正により、一時金受取が不利になるケースが増えているため、年金受取の方が税制上有利になる可能性が高まっています。

次は、年金受取を検討すべき具体的な理由について、さらに詳しく解説していきます。

年金受取を検討すべき3つの理由

iDeCoの受け取り方法として「年金受取」を選択すると、税負担を抑えながら計画的に老後資金を管理できるメリットがあります。特に、最近の税制改正によって一時金受取のハードルが上がったことを考えると、年金受取を積極的に検討する価値が高まっています。 ここでは、年金受取を選ぶべき3つの理由について詳しく解説します。

① 「公的年金等控除」を活用できる

iDeCoを年金形式で受け取る場合、その受取額は**「公的年金等控除」**の対象になります。公的年金等控除とは、年金収入に対して一定額が非課税になる制度であり、高齢者の税負担を軽減するための仕組みです。

具体的な控除額(65歳未満・65歳以上のケース)

年金収入65歳未満の控除額65歳以上の控除額
60万円以下全額控除全額控除
60万円超~130万円以下60万円110万円
130万円超~410万円以下収入×25%+27.5万円収入×25%+27.5万円

例えば、65歳以上で年間100万円のiDeCo年金を受け取る場合、110万円までが控除対象となるため、非課税になります。つまり、公的年金等控除の枠内で受け取ることで、税金を払わずにiDeCoの資産を取り崩せる可能性が高くなります。

② 一時的な高額所得を避け、税負担を平準化できる

一時金として受け取る場合、まとまった金額を一度に得ることになるため、退職所得控除を超えた部分が課税対象となります。特に、退職金とiDeCoの受け取りが重なると、税率が上がるリスクがあるため注意が必要です。

一方、年金受取を選択すれば、年間の受取額を調整しながら、所得を平準化できます。これにより、以下のメリットが得られます。

所得税や住民税の負担が軽減される
健康保険料や介護保険料の負担が減る可能性がある
退職金の受け取り後すぐにiDeCoを使い始めても、税金を抑えられる

例えば、退職後すぐに年金受取を開始し、年間80万円ずつ受け取れば、公的年金等控除の範囲内に収まるため、税負担ゼロで資産を取り崩せる可能性があるのです。

③ 将来のライフプランに柔軟に対応できる

一時金で受け取ると、まとまった資金を自分で管理しなければなりません。しかし、年金受取を選択することで、計画的に資産を取り崩しながら、将来のライフプランに柔軟に対応できます。

特に、老後の生活費は、年齢が上がるにつれて変化することを考えると、年金形式で受け取るメリットは大きいです。

60代前半:退職直後は出費が増える時期(旅行・趣味・住宅リフォーム)
70代:健康に気を使いながら安定的な生活を送る時期
80代以降:医療費・介護費が増える可能性がある時期

このように、年齢によって必要な資金は変わっていきます。年金受取を選ぶことで、生活費を確保しつつ、必要な分だけ計画的にお金を使えるため、資産の枯渇リスクを減らせます。

また、一時金として受け取ってしまうと、高額な出費が発生したときに一気に資産が減ってしまうリスクもあります。例えば、「長生きリスク」に備えるためにも、定期的に一定額を受け取れる年金方式は安心感があるといえます。

年金受取のメリットを活かそう

iDeCoを一時金で受け取ると、大きな税負担が発生する可能性がある一方、年金受取を選択すれば、公的年金等控除を活用しながら税負担を抑え、計画的に資産を取り崩すことができます。

特に、
公的年金等控除を活用できる
所得を平準化して税負担を軽減できる
ライフプランに合わせた柔軟な資金管理ができる

という3つのメリットを考えると、年金受取を選択する価値は非常に高いといえます。

次は、実際にどの受取方法が最適なのか、ケース別に解説していきます。あなたの状況に最も適した方法を見つけるヒントにしてください。

どちらを選ぶべき?ケース別の最適な選択肢

iDeCoの受け取り方法として、「一時金受取」と「年金受取」のどちらを選ぶべきかは、個々の状況によって異なります。 ここでは、具体的なケースごとに、どちらの受取方法が適しているのかを解説していきます。

① 退職金がある場合のおすすめの受取方法

✅ 退職金が少ない or ない場合 → 一時金受取も選択肢
退職金が少額(例:数百万円以下)であり、退職所得控除の範囲内に収まる場合は、一時金で受け取っても税負担がかからない可能性があります。

  • 退職金が500万円、iDeCoの一時金が300万円の場合
  • 退職所得控除の範囲(20年勤務で800万円)に収まるため、一時金受取でも税負担は発生しない

❌ 退職金が多い場合 → 年金受取が有利
退職金が大きい(例:数千万円)場合は、退職所得控除の枠を超えてしまい、iDeCoを一時金で受け取ると、課税対象となる可能性が高くなります。

  • 退職金が2000万円、iDeCoの一時金が1000万円の場合
  • 退職所得控除を超えた部分が課税対象となる

このようなケースでは、iDeCoは年金受取にすることで「公的年金等控除」を活用し、税負担を軽減できる可能性が高くなります。

② 他の年金とのバランスを考えた戦略

iDeCoの受け取り方法を決める際は、公的年金(国民年金・厚生年金)とのバランスも考慮することが重要です。

公的年金の受給額が少ない人 → 年金受取を活用
例えば、自営業者やフリーランスの方は、厚生年金がなく、老後の年金収入が少なくなる傾向があります。 そのため、iDeCoを年金受取にして、公的年金等控除を活用しながら、計画的に資産を取り崩すのが有利になります。

公的年金の受給額が多い人 → 一時金受取も選択肢
会社員や公務員として長く勤めた方は、厚生年金の受給額が多くなるため、公的年金等控除の枠を超える可能性があります。その場合、iDeCoの受け取り方を一時金+年金の「ハイブリッド型」にすることで、税負担を最適化できます。

③ 「ハイブリッド受取」も選択肢に

一時金と年金のどちらか一方を選ぶのではなく、「一部を一時金で受け取り、残りを年金受取にする」という方法もあります。 これを「ハイブリッド受取」と呼びます。

ハイブリッド受取のメリット✅ 退職所得控除の範囲内で一時金を受け取り、税負担を抑える✅ 残りは年金受取にして、公的年金等控除を活用する✅ まとまった資金を確保しつつ、老後の生活費を分散して受け取れる

例えば、

  • iDeCoの資産が1000万円ある場合
  • 300万円を一時金で受け取り(退職所得控除の範囲内)、残り700万円を年金受取にする

このように、一時金と年金を組み合わせることで、税負担を最小限に抑えながら、柔軟に資産を取り崩すことができます。

自分に合った受け取り方法を選ぼう

iDeCoの受け取り方法は、一時金と年金のどちらか一方だけでなく、「ハイブリッド型」も含めて選択肢を広げることが大切です。

退職金が少ない人 → 一時金受取も検討
退職金が多い人 → 年金受取の方が有利
公的年金の受給額が少ない人 → 年金受取で安定的に資金を確保
公的年金の受給額が多い人 → 一時金+年金のハイブリッド受取が有効

このように、受け取り方次第で税負担が大きく変わるため、事前にシミュレーションを行い、自分にとって最適な方法を選ぶことが重要です。

次は、受け取り方による具体的な手取り額の違いを比較し、iDeCoを賢く活用するポイントを解説します。

まとめ:iDeCoの賢い受け取り方を考えよう

iDeCoは、老後の資産形成において強力な税制優遇が受けられる制度ですが、受け取り方を間違えると、せっかくの節税メリットが減ってしまう可能性があります。 2024年の税制改正により、一時金受取のハードルが上がったことで、年金受取を含めた柔軟な選択がより重要になっています。

受け取り方法によって手取りが大きく変わる

これまで解説してきたように、iDeCoの受け取り方法には、次の3つの選択肢があります。

一時金受取(退職所得控除を活用)
年金受取(公的年金等控除を活用)
ハイブリッド受取(一時金+年金の組み合わせ)

特に、

  • 退職金が多い人
  • 退職後10年以内にiDeCoを受け取る人

は、一時金として受け取ると高額な課税対象となる可能性があるため、年金受取の方が税制上有利になるケースが増えています。

また、iDeCoの資産が一定額以上ある場合、一時金と年金を組み合わせた「ハイブリッド受取」を活用することで、税負担を分散し、より多くの手取りを確保することができます。

制度変更を踏まえた賢い選択を

税制は今後も変わる可能性がありますが、今回の改正により、

  • iDeCoの受け取りを一時金だけに頼るリスク
  • 公的年金等控除を活用できる年金受取の有利性

が改めて浮き彫りになりました。

「iDeCo=一時金受取が最適」と考えていた人は、今回の税制改正を機に、年金受取やハイブリッド受取を含めた柔軟な受取戦略を検討することが重要です。

最後に:受け取る前にしっかりシミュレーションを!

iDeCoの受け取り方法を決める際は、一度シミュレーションを行い、どの方法が最も税負担を抑えられるかを確認することをおすすめします。

退職金との合算による税負担の変化
公的年金等控除の範囲内での受取額の調整
自分のライフプランに合わせた受取方法の選択

これらを考慮することで、税金を抑えつつ、老後の資産を効率よく活用することができます。

「iDeCoの受け取りは一時金がいい」と決めつけず、慎重に検討し、賢く受け取ることで、より豊かな老後を迎えましょう!

イガラシ
イガラシ

改悪されてもiDeCoはまだまだ良い制度!

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