卵を一つのトラックに乗せるな

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投資を始めるとほぼすべての人が聞いたことがある「分散投資」。これは、「卵を一つのかごに盛るな」という古い格言によく例えられます。すなわち、全ての卵(あなたの資金)を一つのかご(一つの投資)に入れるのではなく、複数のかご(複数の投資)に分けて入れることで、一つのかごが倒れたときに全ての卵が割れるリスクを減らすのです。

しかし、この分散投資の考え方を少し深堀りすると、単に異なる地域や企業への投資を分散するだけでは不十分な場合があることに気付きます。それは、資産クラスも考慮に入れるべきだからです。今回は資産クラスの分散について解説します。

かごを分けても、かごを積んだトラックが事故にあう

分散投資の考え方に従い、私たちは「全世界株式」に投資することを考えるかもしれません。これにより、投資は世界中の様々な地域に分散され、一部の地域で経済的な問題が発生しても、他の地域での成長がその影響を相殺することが期待できます。

しかし、ここには一つの重要な注意点があります。それは、全ての投資が同じ資産クラス、つまり株式に依存しているという点です。これは、複数のかご(投資先)を積んだトラック(資産クラス)が事故に遭った場合のような状況を想像してみてください。その場合、かごがいくつあっても、トラック全体が事故に遭えば、全てのかごが影響を受ける可能性があります。

同じように、全世界の株式に投資するということは、株式市場全体が暴落した場合、あなたの投資ポートフォリオ全体が影響を受ける可能性があるということです。これは、株式市場の動きに大きく影響を受けるという意味で、ポートフォリオのリスクが高まる可能性があるということになります。

だからこそ、私たちは資産クラスの重要性を理解し、それを考慮に入れる必要があります。株式だけでなく、債券や不動産、コモディティなど、異なる資産クラスに投資を分散することで、市場の変動リスクを更に抑えることが可能になります。

相関係数から見る米国株式と全世界株式の関係

相関係数とは、2つのデータ間の関連性を示す数値のことです。この値は-1から1までの範囲を取り、1に近づくほど正の相関が強く、-1に近づくほど負の相関が強いことを示します。この数値を理解することで、私たちは異なる投資間の関連性を見ることができ、それがポートフォリオの分散度合いにどのように影響を与えるかを判断することができます。

J.P.モルガン・アセット・マネジメントの資料によれば、資産クラスの相関係数は以下のとおりです。

出典:J.P.モルガン・アセット・マネジメント(https://am.jpmorgan.com/jp/ja/asset-management/per/insights/market-insights/guide-to-the-markets/guide-to-the-markets-slides-apac/investment-principles/gtm-jp-assetclasscor/

たとえば、米国株式と全世界株式の相関係数を考えてみましょう。直近3年間の相関係数は0.98、直近10年間でも0.97となっています。これは、これら二つの投資の価格動きが非常に密接に関連しています。つまり、米国株式が上昇すると、全世界株式もほぼ同時に上昇する傾向があります。反対に、米国株式が下落すると、全世界株式も同様に下落する可能性が高いです。

これは、全世界株式に投資することが必ずしも十分な分散をもたらさないことになります。なぜなら、米国株式と全世界株式の動きがほぼ同じであるため、一方が大きく値を下げた場合、他方も同様に下落する可能性が高いからです。このような状況を避けるためには、相関係数が低い、つまり価格動きがそれほど関連していない異なる資産クラスへの投資を考えるべきです。

資産クラスの分散を考えると債券投資は必須

株式だけでなく、別の資産クラスである債券への投資も考慮に入れるべきです。債券は、株式とは異なる特性を持っています。具体的には、債券は企業や政府からの借金であり、投資家はこれを購入することで一定の利息を受け取る権利を得ます。また、債券の価格は通常、株式とは逆の方向に動く傾向があります。これは、市場の不安定性が高まると、投資家たちはより安全な資産(債券)へと資金を移す傾向があるためです。

このように、債券は株式とは異なる動きをするため、株式と債券を組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを抑えることが可能です。さらに、株式と債券の相関係数は通常、それほど高くないため、一方が大きく値を下げた場合でも、他方がその影響を相殺する可能性があります。

これは、ノイズキャンセリングの技術によく似ています。ノイズキャンセリングのヘッドフォンは、外部のノイズ(市場の不安定性)と逆の波形(債券)を生成することで、不要な音(リスク)を打ち消します。この打ち消しの効果は、相関係数が低い2つの音波(株式と債券)が互いに影響を相殺し合うことで実現されます。

これらの理由から、債券への投資は分散投資戦略の一部として重要な役割を果たします。そして、資産クラスを超えた分散投資により、より安定したリターンを追求することが可能になります。

まとめ

全世界株式への投資と、その重要性を理解することは大切です。しかしそれだけでは十分ではないのです。投資ポートフォリオの安定性と成長性を高めるためには、異なる資産クラスにまたがる分散投資が重要となります。

資産クラスの分散は、卵を運ぶ方法を様々な乗り物に分ける作業です。卵のかごをすべてトラックに乗せるだけでなく、船や飛行機等、事故にあうリスクを想定して分散します。同様に、投資も株式だけ、または債券だけに偏らせるのではなく、株式、債券、不動産、コモディティなど、様々な資産クラスにまたがる投資を行うことで、リスクとリターンのバランスを保つことができます。

さらに、資産クラス間の相関関係を理解し、それらをうまく組み合わせることで、市場の変動に強いポートフォリオを作り出すことが可能になります。これは、ノイズキャンセリングヘッドフォンが異なるノイズを打ち消すことで静寂を作り出すのと似たような概念です。

これらを踏まえ、資産クラスを超えた分散投資は、投資の成功を左右する重要な要素であると言えます。各資産クラスの理解と適切なバランスが、投資家の資産を守り、目標に向けて成長させるための鍵となるのです。

イガラシ
イガラシ

インデックスの積立がある程度大きくなってきたら、債券投資も検討してみよう!

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